UberやAirbnbが経済にもたらす革命的なインパクト

オライリーメディアの創始者であるTim O’Reilly氏の論考。「シェアリング・エコノミー」と呼ばれる、UberやAirbnbといった新時代のサービス。このようなサービスの出現は、単なる雇用形態の変化などではなく、これまで我々が当たり前だと思っていた経済の構造を、根本から変えてしまうようなインパクトを持つ歴史的な出来事なのだと O’Reilly氏は主張する。

「会社」というものが存在する理由

現代社会で働いて生活する我々は、ほとんど例外なく何らかの形で「会社組織」と関係している。多くの人は会社に所属して働いているだろうし、そうでない人もどのような形であれ会社というものに関わりを持っているはずである。今となっては我々の経済活動から会社というものを切り離すのは不可能であるように思える。では、この会社というものが存在する理由は一体何なのだろうか?

アダム・スミスが『国富論』を発表した18世紀。多くの経済学者は、経済システムがうまく機能するために「中央管理」は必要ない、むしろ有害でさえあると考えていた。市場の自律的な仕組みに任せておけば、いわゆる「(神の)見えざる手」によって自然にバランスが保たれ、経済はうまく回るはずであると。

この分散型自律経済の考え方はその後もしばらく経済学の主流であったが、20世紀に入って初めてその考え方に疑問を呈したのがアメリカの経済学者ロナルド・コース(Ronald Coase)である。コースは、市場の中で取引が成立するためには、自律型経済の考え方では想定されていないコストが必要になる事を発見した。例えば、需要と供給はどうやってお互いを発見するのか、価格を決定するための交渉はどうするのか、契約も締結しなければならないし、立場の違いから揉め事も起こるだろう。このような問題を解決するためのコストを「取引コスト(transaction costs)」と呼び、このコストこそがマネジメントや会社組織の存在が要請される根本要因だとした。

21世紀型フランチャイズの出現

コースの理論によれば、会社によって提供されるマネジメントのコストが市場で本来かかる取引コストを下回る限り、会社は存在し続ける事ができる。しかし、会社が大きくなって、その管理コストが市場の取引コストを上回るようになると、会社の存在意義は怪しくなる。この規模拡大によるコストを抑えようとして生まれたのがフランチャイズの仕組みである。マネジメントを行う組織を出来るだけ小さくし、各地に分散した事業者はネットワークを形成してそのマネジメントのサービスを受ける。

しかし、もし市場でかかる取引コストが劇的に下がって、マネジメントにかかるコストを下回った場合、どのようなことが起こるだろうか。そのようなことが実際に起きているのが、今我々が現在進行で経験している「インターネットの時代」である。インターネットが取引コストを劇的に削減する、というのは、GoogleやAmazonがそれまでの市場をどう変えたかを考えれば、そのインパクトを容易に想像出来る。それまでのフランチャイズの仕組みでは避けようがなかった店舗や販売にかかるコストがほぼゼロになり、さらには経験を積んだ管理職が担当していた、商品と顧客のマッチングもソフトウェアによって置き換えられた。つまり、それまでに存在していた会社組織は、その多くが(店舗や一部のマネジメントに至るまで)不要となり、その存在意義や構造を大きく見直さなければならなくなった。

このインターネットによる革命の新たな波がUberやAirbnbといったシェアリング・エコノミーである。シェアリング・エコノミーによって生まれた新しい経済構造を、O’Reilly氏は「個人のフランチャイズ化(The franchise of one)」と呼ぶ。テクノロジーの進歩によって、フランチャイズの末端を構成していた小さな事業者のネットワークは、自身のリソース(Uberでは車とその運転、Airbnbでは家)をパートタイムで提供する「個人」のネットワークに置き換わった。

個人のフランチャイズ化によって、会社のフランチャイズでは提供出来なかったような広大な選択肢(「excess capacity」と呼ばれる)を顧客に提供出来るようになる。例えばUberの場合で言えば、広大な選択肢とは、これまで想定しなかったような場所やタイミングでタクシーを利用出来るようになるということであり、この選択肢の増大が結果としてUberの利用者を増やし、それが価格を下げてさらに需要を拡大するという好循環を生むことになる。

集中型から分散型、そしてまた集中型へ

ロナルド・コースによって理論的な根拠が与えられた集中型の経済構造は、インターネットが出現して18世紀にアダム・スミスが信奉した分散型に形を変えた。個人のフランチャイズ化によって、その傾向はますます強くなっているように見えるが今後はどのように変化していくのだろうか。O’Reilly氏は、いずれまた集中型へ向かうだろうと予測する。インターネットが出現したとき、それは個人と個人を結びつけるネットワークだった。それが時を経て、今では情報の流通を仲介するYahooやGoogleような数多の企業が生まれている。シェアリング・エコノミーの世界でも同様の事が起こるだろうというのは確かに想像に難くない。

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