情報のフローとストックを同じシステムの中で循環させるという Cotoami の枠組みが、とりあえず一通り出来上がってきたので、実験しながら改善策を探るというフェーズに入っている。
公式の Cotoami サーバー https://cotoa.me では、公開でその実験を行なっているのだが、参加者がまだ少ないものの、会話の中からストックとなる情報を組み立てる過程が少しずつではあるが現れてきている。
その循環のプロセスは以下の通りである。
例えば、普通のチャットのように、タイムラインにただ投稿したものは構造のないフラットな、時系列の情報になる。これがいわゆるフローの状態だ。情報はどんどん流れていって、常に最新の情報だけを目にすることになる。
この常に流れていく一次元のタイムラインに、自然な形で構造を導入するとしたら、どのような方法があるだろうか? 最も簡単な方法は、既存の情報に対して reply(返信)をすることである。reply によって、時系列の上に、文脈(話題)の構造が生まれる。
この仕組みは全く新しいものではなく、2chの安価やツリー型の掲示板など、Webの黎明期からあちこちで利用されている。ただし、その構造を見せる方法には色んなバリエーションがある。例えば Cotoami では、タイムラインに複数の話題が混在していても個別に遡っていくことができる。
以下のように、PC上のブラウザであれば、reply の連鎖によって生まれたスレッドを同時に複数開いて比較することも出来る。
reply の次の段階では、タイムライン上で重要だと思うコト(Cotoamiでは個々の発言を「コト」と呼ぶ)を pin して、流れていかないように確保する。
普段通りにチャットする流れで、reply によって会話の繋がりを作るのは自然に行えるが、その発言の中で何を pin しておくかという判断は思ったよりも単純ではない。特に、気ままにチャットを楽しんでいるようなときは、そのようなアクションがあることさえ忘れてしまう。自発的な選択という行為は案外ハードルが高いし、会話に参加する人数が多くなるほど、何を選択するか、という問題の重みは大きくなる。
あるいは、UIのデザインでその障壁を下げることは可能かもしれない。例えば、”pin” ではなくて、”いいね” のような、会話の中で自然に行えるアクションにするとしたら、どのようなものがあるだろうか?(例えば「メモメモφ(・ω・`)」ボタン?)
pin で起点となる情報が出来たら、そこに has-a 関係となるようなコトを追加して構造を作っていく。
現状の Cotoami では、has-a 関係と reply の区別はなく、双方ともポストとポストの間にコネクションを作って辿れるようにする、という同じアクションである。将来的にはコネクションのタイプを指定できるようにしても面白いかもしれない。
そして、最後はコトのコトノマ(カテゴリー)化。Cotoami で最も重要なステップである。
「コトノマ」とはチャットの文脈で言えば、いわゆるチャットルームに相当するものである。コトをコトノマに変換することによって、その話題についての専用のチャット・タイムラインを用意でき、議論をさらに掘り下げることが出来る。と同時に、コトノマはコトと同じように扱えるので、相互に繋げたり、タイムラインにポストしたりすることも出来る。
Cotoami の最終的な目的は、このコトノマのネットワークを作ることである。そしてコトノマは、タイムラインでやり取りされている内容から自然に生まれてくるのが望ましい。そうなれば、出来上がったコトノマのリストは、参加者にとって(先入観からではない)自然に重要なコンセプトになるはずだというのが Cotoami の仮説である。
ここまでの流れを追うと、コトノマが出来上がっていく過程というのは、基本的には「連想」によって駆動されることになる。なので、あるテーマについて話しているときは、その隣接概念がコトノマの候補として上がってくるケースが多い。ただ、個人的にはこの連想だけだとつまらないと思っている。それとは少し違う方法でコンセプトの発見に誘導できないか、というのが今後の大きなテーマである。